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記事公開 2020年9月8日
悩んでいるときはとても辛く、苦しいものです。
その辛さや苦しさゆえに、悩むことをよくないことと考える方もいらっしゃいますし、
「一刻も早く悩みを解消したい!」と願う方は少なくありません。
「悩むだけ無駄!」という考えをお持ちの方もいるでしょう。
厚生労働省が2010年に行った「国民生活基礎調査」では、
12歳以上の46.5%が「悩みやストレスがある」と答えています。そして、年代や性別により悩みの内容に違いがあり、10代は学業や進学の悩みが最も多く、20代では仕事の悩み、人間関係の悩み、お金の悩みの順に多くいという結果になっています。そして、30代・40代になると男性は仕事の悩みが最も多く、女性は子育てや子供の教育の悩みが多くなり、年齢が上がるにつれて、自分の病気の悩みが増加しています。
その人の状況や役割によって、年齢によって、悩みの内容が変化することがわかりますし、
悩みは人生と切り離せないものであると言えます。
アイスキュロスという紀元前生まれの詩人は、次のような言葉を遺したそうです。
「悩みによってはじめて知恵は生まれる。悩みのないところに知恵は生まれない。」
悩むことに対して様々な考えはあるかと思いますが、
どちらにしても、悩んだ結果、このような実感が得られたら嬉しいですね。
悩むことがいい、悪いという評価は置いておき、
「悩みや悩む自分自身についてあれやこれやと考えてみると、何かが生まれるのではないか?」
と日ごろから考えている私なりに、
「悩みに向き合う」というテーマで思いつくことを以下にまとめてみます。
人が悩みを持ち、それに取り組もうとする時、
そこにはその人のタイミングや理由、意味があります。
・人生の節目に差し掛かっている
・新しい役割を担おうとしている
・これまでの課題をクリアしたので、さらなる成長を求めている
・自分の内面を考えるようになっている
など
悩みそのものではなく、悩みを持つ自分自身に目を向けてみるとどうでしょう。今の自分の状況を少し客観視できるのではないかと思います。
あなたが今、悩みを持っているならば、
ご自分にとってどのようなタイミングで生じてきた悩みなのか、そしてその悩みはどのような意味がありそうか、などを考えてみることで、これまでと違った方向から悩みを持つ自分自身が見えてくるかもしれません。
悩みで心が揺れている時は、問題を具体的に把握できにくくなり、「悩んでいるけれど、何が悩みなのかわからない」状態であることが少なくありません。
そのような状態であれば、その悩みがどのようなものであるかを把握することで、少しは冷静になれるでしょう。
次のような視点で悩みに目を向けると、その悩みがどのようなものであるか明確になっていき、問題や自分自身への理解がより深まっていきます。
悩みを具体化する
まずは、何に悩んでいるのかを言葉にしてみます。
書き出してみてもいいですし、誰かに話してみてもいいでしょう。
そして、自分に問いかけてみます。
「何が問題なのか」
「どのようなことを避けたいのか」
「その状況を自分はどう思うか」
「どうなったらよいか」
このように考えていくことで、問題がより明確になっていきます。
それでは、次の例で考えていきたいと思います。
例:事務職の男性。元々電話で話すことに苦手意識がある。話で話している時は周囲に聞かれているのではないかと気になり話に集中しにくくなり、なるべく電話を取らないことで対処してきた。しかし最近、同僚に電話を取ってほしいと言われ、電話を避けることができなくなった。
何に悩んでいるのか
→電話が苦手。周囲に聞かれているのではと思い、電話を取りたくないが、取らなくてはいけない状況になった。
電話が苦手なのはなぜか
→慣れないせいか、焦ってしまう。周りに注意を向けてしまうので、上の空になってしまうこともあり、聞き取れないことがある。聞き返すと、相手を不快にさせてしまうのではないかと思う。
何を避けたいのか
→うまくできない自分を認識すること。そのような自分を相手に見せること。相手を不快にさせること。
何が問題になっているか
→仕事が滞ってしまう。避けようとする思いが強く、落ち着いて仕事ができない。避けているので、いつになっても苦手のままになっている。
この状況を自分はどう思うか
→苦手が克服できたらいいのだけど。無理なんじゃないか?と思うのは、思いが弱いからなのではないか?
どうなったらよいか
→苦手意識が少なくなったらいい。焦らずに電話対応ができるようになれたらいい。
このように、自分に問いかけてみると、これまで気づかなかった自分自身が見えてきます。
2. 事実と不安とに分けてみる
悩みがどういうものか明確になってきたら、事実と不安とに分けてみるといいでしょう。
先ほどの悩みを例に考えてみます。
その人に起こっている事実は、「電話応対に慣れていない」「周囲に気を取られて、電話に集中して対応できない」「苦手意識から電話応対を避けてしまう」ことです。
そして、「聞き返すと相手を不快にさせるのではないか」「周囲に聞かれているのではないか」というのは、事実ではなく、そうなってしまうのではないかという不安です。そして、「うまくできない自分を認識したり、認識されたりすることを避けたい」という思いも、不安からくるものなのでしょう。
また、「苦手を克服するのは無理なんじゃないか?」「そう思うのは思いが弱いからなのではないか?」という考えは、解決できない焦りやしっかりしなければいけないという思いなどから、自分に対する疑念や苛立ちが生じていると理解できるかもしれません。
このように、事実が明確になれば、「電話に慣れていこう」「電話応対に集中する手立てを考えてみよう」という具体的な目標を立てることもできます。
一方、自分が抱いている不安がわかると、価値観や願望、理想像なども見えてきます。
例えば、「なんでもうまくできる自分」を理想として描いている、「人から認められたい」という思いが強いがあるのかもしれない、など、これまではぼんやりとしていたことが明確になったり、気づかなかった思いに気づいたりすることもあります。
そして、そのような価値観や理想をどのように作ってきたのかを振り返ることもできます。
さらに、他の場面や対人関係でも同じような不安を抱きやすかったり、同じような行動パターンが繰り返されていることに気づくかもしれません。
このように、不安には、自分自身についてより深く理解できる可能性が秘められています。
3. 対応を考え、実行していく
どのように対応していくかが明確にできると、不安や焦りは少し軽くなるものです。さらに、自分なりに行動できていると、それもまた不安や焦りを軽くします。
先ほどの悩みを例にします。
「電話に慣れていこう」「電話に集中する手立てを考えてみよう」という目標のために、「電話に慣れるために、電話を使う機会を持つ」「落ち着いて集中して電話対応ができるように、電話メモを準備する」などの具体的な対応を思いつくことができます。ハードルが高いものではなく、スモールステップを設定できると取り組みやすくなります。
(例えば、金銭的な問題や係争問題など、解決に専門家の力を必要とする悩みであるならば、ぜひ弁護士などの専門家にご相談することもご検討ください)
さらに、焦りに対しては、「焦らなくていいと自分に唱える」「時々自分の取り組みを振り返る」などの対応ができると、自分を急かさずにゆっくりと取り組んでいけるようになると思います。
そして、自分で考えた対応を実行し続けていけば、できなかったこともできるようになっていくでしょう。
一方、不安は簡単に消えることはないかもしれません。
でも、「私はまだ起こっていないことを予測して不安になっているのだ」と理解できると、不安に飲み込まれなくなるものです。
以上、「悩みに向き合う」というテーマで思いつくことを書いてみました。
悩んでいることが明確になり、それに対処できるようになるとともに、悩む自分自身への理解も深まると、
「悩むことは成長の糧になる」という実感につながるだろうと思います。
しかし、悩みに向き合う過程は困難を伴うことが少なくありません。
そのため、臨床心理士などの心理専門職とともに、カウンセリングなどで悩みに向き合うことを選択される方もいらっしゃいますし、
今は悩みに向き合わず、悩みから気持ちをそらしておこう、という対応が必要な場合もあるでしょう。
「悩みに向き合ってみようか…」そう思えた時が、そのタイミングではないかと思います。
もし、悩みに向き合ってみようとお考えでしたら、
カウンセリングや心理療法を試してみるのも一つの方法です。
たま・国分寺駅前心理療法オフィスでは、悩みや困りごとに取り組もうとされている方々に、心理カウンセリングや心理療法(精神分析的心理療法)を提供しています。
カウンセリングや心理療法を使うことの意味やメリットは、自分の思いや考えを中立的な立場の人に聞いてもらうことで安心感が得られること、安心感を支えにして対話を続けることで、いろいろな方向から自分自身について考えることができるようになることです。
カウンセリングや心理療法は、悩みに意味を見出し、実り多いものにしたいと望む方のお役に立てるのではないかと思います。